<どうなってる0歳の脳?>
0歳の赤ちゃんは大人顔負けの勤勉家で学習上手です。なんにでも興味を示します。じーっと大人のしゃべる口元を飽きずに見ていたり、カーテンの揺れを見ていたり、足や手をばたばた動かしたり、一見お遊びのように見える数々の動きは、彼らにとっては大切な学習時間。脳の中は活発に動いています。常に興味をもち、観察し、試すことで脳に刺激を与え、そして物の因果関係や世の中の仕組みを学んでいるのです。
人間の脳が一番変化するのは、はじめの1年です。この一年で、食べ方、歩き方、話し方まで大人と同じ能力の基礎を身に着けます。実際、脳の中ではニューロンの結合が激しく行われており、出生前後にはなんと毎秒4万個もの新しいシナプスができているといいます!1歳までに大人の脳の70%、2歳までには80%の大きさになります。2年の間にほぼ2倍の大きさです!でも新しいニューロンは誕生1年目にすざましく生まれますが、そのあとはほぼ誕生せず、あまり使わないものは後から取り除かれていきます(「シナプスの刈り込み」)。
<何をどう学ぶか?タイミングがすべて>
では、小さいころからたくさんの刺激をあたえたら、何ケ国語も話し、微分積分を理解し、ベートーベンのソナタも軽々弾けるスーパー幼児に成長するかというと、残念ながらそういうわけにはいかないようです。
人間の赤ちゃんは「好み」がはっきりしていて、興味ないものには見向きもしません。これは脳の成長と関係があり、今の自分にとって何が必要でそうでないかをよく知っているのです。
例えば、生後すぐの赤ちゃんは人の声、顔、動くものに興味を持ちます。この時期に指をつかって数字の数え方を教えても、赤ちゃんが見ているのは指の動きだけで、数字の意味は頭にははいってきません。でも、興味あることは飽きずに情熱をもって注意を向けています。
学ぶタイミングは本人が「興味」を持った時です。興味がモーチベーションと集中力を高め脳の学習機能を高めます。大人でも一緒ですね。
<0歳とふぇるほん>
ふぇるほんには、同じページでも年齢別に使い方を変えて遊ぶことができます。0歳の赤ちゃんたちは、丸い形が大好きです(1)(2)。大好きなおっぱいや目、顔も丸いですね。まずは、たくさんの〇を見せて動かせて匂って触って(でも食べないように気を付けて)、すべての五感を使って、コミュニケーションをとってみましょう。
興味が移り始めたら、違う形と比べてみて下さい。 3か月の赤ちゃんはもうすでに、赤い丸の中の黒い点を見分ける認知能力が備わっているから驚きです。
色に関しては、赤ちゃんは生後1か月では「光の明暗」と「物の動き」がわかる程度の視力で0.02程しかありません。ほとんど見えてないのですね。だいたい2か月くらいで赤と緑の違いがわかり、3,4か月で黄・青の色が識別でき色覚が完成するといわれています。生後6カ月ごろには、赤、黄、緑、青の四原色に加え、オレンジ、紫など大人と同じくらいの色を認識できるようになります。
さらに2歳以降になると、赤とピンクなどの濃淡の違いもわかるようになり、3歳ごろには「好きな色」「嫌いな色」も出てきます。大人と同じ色覚が備わってくるのは5~6歳ごろといいます。
0歳のあかちゃんには、まずは、「赤い色」「丸い形」から始めてみましょう。そして注意をひくためにはそれを「動かす」のも大切です。いろんな赤い色を見せて触って匂って、一緒に経験する時間を共有してください。そして次第に緑、黄、青と色を増やしていきましょう。
色は「波長」という名前の刺激を持っていて、たくさんの色に触れることは脳がたくさん刺激を受け、感受性を豊かに育んでくれます。人間の五感で一番情報量がいいのは視覚で、全体の約%80を占めます。日々の生活で赤ちゃんが受け取る情報のほとんどが色に関する情報と言ってもいいでしょう。
色は心(とくに情緒)と身体の発達に深く関係しています(3)(4)。たくさんの色を経験し色感覚を磨くと心の成長も促せます。この時代に経験した色感覚は一生ものです。
※成長の段階はあくまで一般的な目安です。今、目の前にいる赤ちゃんが何に興味をもっているか、赤ちゃんとチューニングして交流する時間が脳と心の成長に一番大切です。これは最近になって脳科学や心理学の実験でも証明されつつあります。人生最初の時間を共有する、成長の決め手はここにあります。
References
(1). de Schonen, S., Mancini, J., Camps, R., Maes, E., and Laurent, A. (2005). Early brain lesions and face-processing development. Developmental Psychology 46:184-208.
(2). Aamodt, S., Wang, S.(2012). Welcome to Your Child’s Brain.Bloomsbury Pub Plc USA.
(3). Cathy A. Malchiodi (1998). Understanding Children’s Drawings. Guilford Press: NY.
(4). http://renketkisi.com/en/the-effects-of-colors-on-children.html